苦楽園という西宮の高級住宅街の一角にある「鮨 まつ本」は今や2ヶ月以上前からの予約が必要となる超人気寿司店。
店主の松本純さんは、なんと寿司店のでの修行経験が無しでお店を立ち上げたという変わった経歴の持ち主。寿司店と聞くとどうしても十何年修行をしなくてはいけないといったイメージがありますが、松本氏はそんな固定概念を打ち壊し、その瑞々しい感性で独自の世界を築き上げています。
基本的に取材は受けられてないとのことですが、今回は”ごちそうさん”ならということで取材をさせていただきました。
美味しいお寿司、そして丁寧で柔らかい接客は素晴らしいの一言。チャンスがあれば、ぜひ訪れてほしい【鮨 まつ本】です。
鮨 まつ本 とは
店主松本純さんは2007年に鮨 まつ本をオープン。なんとその二年後にはミシュラン関西で2つ星を獲得。
驚くべきは冒頭でもお伝えしたように、松本氏の経歴です。なんと寿司店での取材経験なし。それでわずかお店の立ち上げ2年後にはミシュラン2つ星ですから、恐れ入ったものです。
元々食に興味があり、大の寿司好き。色々なお店を食べ歩いているうちに”自分で寿司屋を開いて美味しいものをみなさんに味わってもらいたい”との思いがあり、独学で寿司を勉強され、お店を立ち上げたとのことです。
金沢のレジェンド寿司職人 小松弥助の森田一夫氏との出会い
そんな松本氏の大きな転換期となったのは、小松弥助という金沢の超名寿司店の大将、森田一夫氏との出会い。(森田氏は2022年現在92歳で現役です!)
ある日鮨 まつ本に森田氏が訪れ、松本さんのお寿司を絶賛。それをご縁に親しくなり、松本さんは金沢の小松弥助に定期的に訪れ、お寿司を味わったり、お店の手伝いをしたりしてさらに腕前をあげたんだそうです。
小松弥助の森田氏といえば、知る人ぞ知る寿司の世界のレジェンド。そんな方に認められるだけでもすごいですが、そこからさらに影響を受け独自の世界を作り上げていった松本さんはやはり天才肌の職人さんですね。
鮨 まつ本を代表する一貫、剣先イカ。厚さ1㎝のイカを、3㎜ごと三層に切り分けて出すスタイルにも森田氏の影響が感じられる。
寿司職人としての腕もあがったことも大きいですが、森田氏との出会いで接客のスタイルにも変化が。
以前は”美味しいものを淡々と出すスタイル”だった松本さんですが、森田氏の”すしを通じてお客さんとのコミュニケーションをとる”そのスタイルに感動され、今の洗練されながらも丁寧にお客さんと向き合う”お客様と食材に感謝をして真摯に仕事に向き合う”スタイルへ変化したとのことです。
実際に鮨 まつ本へお邪魔させていただいた時もその丁寧な接客や松本純さんのその柔らかな物腰と話し方が非常に素晴らしかったです。松本さんは一見するとデザイナーのようなおしゃれで繊細な雰囲気ですが、お寿司を握る時とのメリハリがあり、見ていてもかっこいいなあと感じました。
堅苦しさや有名店での緊張感などが全くないので、ランチタイムは女性のお客様が多く訪れられるようです。(苦楽園が高級住宅地ということもあるのでしょうが)
鮨 まつ本は基本、おまかせコースのみ。ランチも楽しめる
鮨 まつ本はカウンター8席-10席のみのシンプルながら洗練されたモダンな雰囲気のお店。カウンターは白木の立派なもの。
カウンター内に松本さんを含め数人のスタッフさんがおられ、みなさん目の前のお客さんに丁寧に対応していきます。この辺りも鮨 まつ本が大人気の秘密ですね。
カウンターのみなので大勢よりかはご友人、ご夫婦、カップルなど2人単位の方が話しやすいかもしれません。
構成は一品ものをいくつかいただいた後、握りに入っていきます。
一貫ずつですが、ゆっくり提供されること、そして松本さんが丁寧に説明していただきながらしっかりと味わいながらいただくので、お腹は十分満たされました。(もちろん足りない場合は追加で注文可能です。)
お店はランチとディナーの二部構成です。ランチは15,000円〜、ディナーは通常18,000円〜となりますので特別な日やお祝いのシーンに良いですね。
お寿司の特徴はシャリにある?
鮨 まつ本のお寿司は一貫ずつ提供されるスタイル。シャリは小ぶりなので食べやすく、女性の方には特にぴったりなのではないでしょうか。
そのシャリは流行りとは異なり、食べ疲れない味にと塩、酢がまろやかで控えめにされていましたが、その分ネタの味がより味わえるような気がしました。
鮨 まつ本のシャリの特徴は味わいもそうですが、温度にもこだわっています。
ネタごとに最適なシャリの温度に調整してあり、低音、中音、高音のシャリを使い分けていらっしゃいました。この辺りも繊細さを感じますね!
その日、鮨 まつ本でいただいたコース内容
鮨 まつ本のある日のコースをご紹介します。もちろん季節の食材を扱われるので、シーズンによってコースの内容は異なります。(今回ご紹介するのは取材時、2022年8月のコース)
コースは全てお任せ、これに日本酒や焼酎、ワインなどを合わせて楽しむのがおすすめ。
ある日のランチコース内容
※コースの内容は季節・日にちにより変わります。
- いくらの卵かけご飯
- 蒸し鮑
- 雲丹2種食べ比べ
- 甘鯛酒煮
- 鯛刺身
- 鮎パテ
- 平貝とバチコの磯部巻き
- 赤身ヅケ
- ケンサキイカ
①雲丹2種食べ比べ
ウニは季節で産地を変えその時々で最高の物を出されています。
春から夏なら地物、淡路島由良を中心に、その他にも様々な産地から取り寄せているとのこと。この日は淡路島の由良産のものを味わいました。
全く臭みがなく、味はまろやか。ウニ好きなら必食です。
②淡路の鯛 刺身
こちらは淡路の鯛のお造り。食材の食感、旨味を引き出すよう計算尽くされて造られたぷりぷりの身には適切に塩が当てられており、ワサビだけでもお醤油を少しつけても美味しい。
もちろん丁寧におろされた本ワサビも香り豊か。
③鮎パテ
鮎の美味しさを全て味わうにはどうしたらいいかを考えた結果、松本さんが生み出した鮎のパテ。
鮎の身を全て余すことなく使いパテに。和風の鮎と洋風のバゲットと合わせることで面白いアプローチとなっています。
とても濃厚で鮎の風味が鼻に抜けて、素晴らしかったです。こんな鮎の食べ方があるなんて!とても手間がかかっている一品。
④赤身ヅケの握り
思わず口に入れるとにやけてしまいますね。厚めに切り付けた赤身を特製のヅケだしにくぐらせた赤身ヅケの握り。シャリとの一体感を大切に考えて握られているそう。
⑤ケンサキイカの握り
先ほどもご紹介したように、鮨 まつ本の代表作の一つでもある。ケンサキイカの握り。
厚さ1㎝のイカを3㎜ごと三層に切り分け、空気を含むように繊細に纏められています。
胡麻、柑橘の香りがほんのりとつけられており、塩味のバランスを感じながらいただく一品、いや逸品。
鮨 まつ本のお店情報
いかがだったでしょうか、今回は苦楽園にある鮨 まつ本さんについてご紹介いたしました。現在超人気店となっており予約は3ヶ月以上先になる場合もあるそうです。
また取材も基本的にはNGとされているようで、当サイトが取材させていただいたのは非常にラッキーでした。
お寿司やお料理の味はもちろん最高なのですが、松本さんのお人柄と接客、そしてお店の佇まい、また閑静なエリアにあるお店ということもあり、訪れるお客さんと作り上げる雰囲気が本当に素晴らしく、これほど人気店となった秘密を見た気がしました。
鮨 まつ本
- 予算:ランチ:15,000円~ ディナー:18,000円〜
- 最寄り:阪急甲陽線 苦楽園口徒歩7分
- 住所:兵庫県西宮市樋之池町2-33 セルシェール苦楽園 1F
- ランチ: 12:00~14:00(13:00までに入店) ディナー:17:00~22:00(20:00までに入店)
- 月曜日(祝日の場合は翌日) ランチ 火曜日 土曜日
- 電話番号:0798-74-5499 ※現在3ヶ月ほど予約が埋まっているとのこと。あらかじめご了承ください