大阪北新地のエスパス25というビルの3Fに大阪の肉好き、特にタン好きなら必ず一度は行くべき予約の取れない名店があります。それが「北新地 やまがた屋」。
カウンター6席のみのお店でライブ感のある調理を見ながら、店主の焼いたお肉や調理していただいたタンを最適なタイミングでいただく。
これがやまがた屋スタイルだ。
やまがた屋とは
やまがた屋の店主は山形崇 氏。1997年に大阪西天満に「やまがた屋」を開店。
一般的なお客さんがお肉を焼くスタイルからスタートし、その後2001年に店側がお肉を焼いて提供するスタイルを確立。
今の北新地に移ってからも尚、高い評価を受ける名店です。
質の高い素材しか出さない、調理しない。こだわりのスタイル
やまがた屋で出されるお料理は全て鮮度や質にこだわり抜かれた素材のみ。そして最適な調理方法とは何かを考え抜かれた逸品。
基本的に店主、山形崇氏のリクエストや説明に沿ってお料理をいただきます。例えば「タン焼きは焼き目の反対側を舌の上に載せる」「お店側が開けるまで鍋の蓋を開けない」など。
気難しいお店なのでは?と感じるかもしれませんが、決してそうではありません。
これは最適なタイミングや食べ方で、最高の料理を味わってもらいたいという店主、山形崇氏の想い故。
実際にお料理や素材のことを伺ってみると、その深い造詣をもとにした興味深いお話を沢山してくださり、山形氏の食への興味の高さ、そして食材への愛が感じられ非常に勉強になりました。
やまがた屋といえばこれ、タンのトリミング
「やまがた屋は質の良い部位しか出さない」を象徴するシーンはやはりこちらではないでしょうか。タンのトリミングです。
こだわり抜いて仕入れているタン(写真手前)をどんどん表面からカットしていきます。
あまりにもどんどんとトリミングされていくので、貧乏性な筆者は「ああ…勿体無い…」と思ってしまうのですが、ご主人は「うまいとこを食べるためやから」とそんなことは気にしません。
最終的に最も柔らかく、肉質の細かな芯の部分を薄くカット。
この艶かしくも美しい、牛タン。たまりませんよね。
ご主人曰く「舌の動かさない根元の内側の部分、ここが一番筋肉として使われていないので柔らかく、うまい」とのこと。
「一番良いものをゲストに提供する」を追求することによって生まれた作業というわけです。
やまがた屋では「焼き」と「タンしゃぶ」の2種類が用意されている
現在、やまがた屋さんでは「焼き」を中心にしたコースと「タンしゃぶ」を中心にした2種類のコースが予約時に選択できます。
今回はお邪魔したのが、12月ということで季節のきのこをふんだんに使用した「きのこ鍋でタンしゃぶ」を中心にしたコースにしていただきました。
さて、そんなタンのトリミングを見ながら、前菜としてキムチの盛り合わせをいただきます。
やまがた屋のファンにはこのキムチの盛り合わせを楽しみにされている方も多いはず。
特製キムチの盛り合わせ
この日のキムチの盛り合わせは以下の内容でした。(左上から時計回り)
- とうもろこし
- 松波キャベツ
- パイナップル
- 洋梨
- クラウンメロン
- トマト
- チャンジャ 鱈の内臓
- エゴマの醤油漬け
とうもろこしは身の甘みがしっかりと残っていながら、辛味が相まって絶妙な仕上がり。
松波キャベツ、別名泉州キャベツは糖度が高く葉が柔らかいキャベツで非常に人気があります。
また評判の高いパイナップルや洋梨、クラウンメロンは珍しいフルーツのキムチですが非常に爽やかで後味が良く美味しくいただけました。
季節や日によって内容は変わりますので、その日にどんなキムチをいただけるのか、楽しみになりますね!
お料理を待っている間にいただくワイン。これもまた美味しくてどんどんと杯が進みます。
大根の鬼おろし
ここで大きな鉢に入った大根おろしが登場。荒めにおろされた大根おろしに韓国産の2種類の唐辛子と特製ポン酢をかけてサラダのようにいただきます。
この大根おろしは後でお肉やお鍋の味付けとしても活躍するのですが、まずこの大根おろしそのものが非常に美味しい。
さっぱりしていて沢山食べてしまいましたが、大根おろしなのでお腹が膨れてしまわないので良いですね。
粗めの唐辛子と細かい唐辛子が2種類。
粗めの方が柔らかい辛さ、細かい方がピリッとした辛さ。まずは粗めの方を入れてからさらに辛味を足したい場合は細かい方を使うのがおすすめです。
メインディッシュのタンしゃぶ、そして焼きタンを味わい尽くす
さて本日のメインディッシュ、タンしゃぶの登場です。
こちらが先ほどトリミングされたタン。試しに箸上げをしてみるとその弾力とサシの入り具合…これはたまりません。
やまがた屋さんのタンしゃぶはタンももちろんですが、このキノコたちも主役級。
こちらも季節によって内容が変わりますが、時期によっては天然物の希少なキノコもいただけるそう。
なめこ、ひらたけ、キクラゲ、大黒本しめじ、柿の木茸、あわび茸、はなびらたけ、舞茸と上質なきのこがたくさん。そして立派な旬の野菜たち。
もちろんこのお鍋も店主が丁寧に調理してくれます。
見てください、この美しいお鍋。火入れの前から期待が高まります。
やまがた屋さんはご主人のキャラクターやユーモア、調理シーンがどうしても話題になりがちですが、筆者としてはこのお料理を出す際にも調理される際にも細部にまでこだわられた美的感覚や「どうやったら素材やお料理が美しく見えるか」を追求されているその姿勢にも非常に感銘を受けました。
天然クレソンや黄ニラがタンに合いすぎる
さて、さっそくタンしゃぶをいただいていく訳ですが、まずはクレソンと合わせていただきます。
クレソンはものによっては癖が強く料理の中で主張が強くなりすぎることもありますが、このクレソンは柔らかい風味で柔らかな食感。半レアのタンに非常に良く合います。
タン単品だけでも、もちろん美味しいのですが、クレソンの風味がお肉の味を一段階引き上げます。美味しすぎる!
続いて、黄ニラ。
この黄ニラは一転してシャキシャキした食感がアクセントとなり、タンのなめらかな食感との対比が楽しい。
クレソンの後に黄ニラというのがコントラストを生み出していて、やまがた屋さんの演出にやられてしまいます。
先ほどいただいていた大根おろしがまた合うんです。
リーキ(西洋ネギ)
別名、西洋ネギとも呼ばれるリーキ。肉厚のネギは非常に熱いので食べるときは一枚一枚表面から剥がしていただきます。
リーキは一般的なネギよりもネギ臭さが少なく、とろりとした食感が特徴。
熱が入ることにより甘みが出ています。
しいたけ
肉厚の立派なしいたけ。良いしいたけは茸臭さが少なく濃厚な旨味を味わえます。
大阪生野で作られた手作りお揚げさん
大阪の生野で作られている昔ながらの京揚げを香ばしく炙ったものです。
京揚げは一般的な油揚げと異なり、厚みがあり横長に大きいのが特徴。
やまがた屋さんでいただく京揚げはさらに肉厚で豆腐にも少し近いような仕上がり。これがまた美味しいんです。
生姜醤油でいただきます。
表面はパリッと、中はしっとりとろり。こちらもぜひ食べてみてほしい逸品です。
タン焼き
次はタン焼きです。片面焼きがやまがた屋スタイル。上の焼けた部分に大根おろしをドバッと多めに載せていただきます。
この時の食べ方にコツがあるので要注意。それが「焼き面の反対側を真っ直ぐ直接舌の上に載るように置いていただく」です。
こうすることによりタンの食感がまず舌にダイレクト伝わり、それからじわりと脂の甘さが口の中に広がっていきます。
正直、これまで食べたどのタン焼きよりも美味しいです。まさに衝撃。
この絶妙なレア感での焼きがやまがた屋さんにしかできない仕事ぶり。自分で焼いたらこのような仕上がりは期待できません。
最後の締めは絶品きのこ雑炊
ここまででもかなりのボリュームがありお腹いっぱいになってくるのですが、最後のこれをいただかずしてやまがた屋さんでの食事は終われません。
そう、これまでのタンやきのこ、野菜の出汁を活かして作る「絶品きのこ雑炊」です。
一度お鍋から引き上げられたきのこや野菜は細かく刻まれてお鍋に戻され、ご飯と合わされます。
それに溶き卵を流し込んで残しておいたタンを載せれば…
絶品雑炊の完成ですね。
ああ、もううますぎる。濃く滋味あふれる旨味がたまりません。
きのこやタンってこんなに濃い出汁が出るのか!と驚かされました。
この雑炊は残った分はお持ち帰りでいただけるのも嬉しいポイント。次の日に温め直してもとても美味しいですよ。
やまがた屋でしか味わえない季節の極上の料理をぜひ
今回は秋冬ということで旬のきのこを使用したタンしゃぶをいただきましたが、時期によりとても貴重な花山椒を使用したお鍋やお料理など、さまざまな季節の極上の素材を使用したお料理がいただけます。
いつ訪れてもたくさんの驚きと感動を与えてくれるやまがた屋。ぜひ皆さんも足を運んでみてください。
やまがた屋のお店情報
やまがた屋
- 予算:ディナー 25,000円〜※季節や時期により予算は異なります。
- 最寄り:西梅田駅/北新地駅
- 住所:〒530-0003 大阪府大阪市北区堂島1-5-5 エスパス北新地25 3F
- 18:00~20:00
- 定休日:日曜日・祝日
- 電話番号:080-5319-8929